セルベースSPR顕微鏡システム:膜タンパク質ーアナライト相互作用解析 (Biosensing Instrument)
セルベースSPR 顕微鏡システム【SPRm 220 Series】は、細胞表面に発現している膜タンパク質や糖鎖に対するタンパク質、低分子化合物、ペプチド、ナノ粒子などの結合反応を、非標識でリアルタイム計測することができます。結合標的を発現している細胞を SPRセンサーチップ上で培養・固相化してリガンドサンプルとして使うため、細胞表面で実際に起こっている結合イベントをダイレクトに検出・解析することができます。
セルベースSPRの利点
- 膜タンパク質の単離・精製が不要
- 細胞膜依存的な膜タンパク質の構造・機能の保存
- ネイティブな細胞膜環境をベースとする in vitro 計測系
- 細胞膜環境のヘテロジェネイティに起因するアビディティ効果の特定
- 細胞解析系(Functional Assay, IC50, Ki)と相関性が高いKD値の取得
膜タンパク質の単離・リコンビナント化・精製が不要
膜タンパク質は細胞膜から単離・リコンビナント化することによって、機能が喪失する/低下する、凝集して不溶化する、また機能を維持した状態で精製できた場合でもサンプルロット間で機能性に差が出るなど、サンプル調製が難しいことが知られています。セルベースSPR顕微鏡システムは、結合ターゲットの膜タンパク質を発現している細胞をSPRセンサーチップ上で培養してリガンドサンプルとして使用するため、膜タンパク質の単離・精製を行う必要がありません。
細胞膜環境をベースとするin vitro計測系
SPRセンサーチップ上で培養・固相化した細胞をリガンドサンプルとするin vitro計測系で膜タンパク質とアナライトとの相互作用を計測するため、細胞表面におけるリアルな相互作用の情報を得ることができます。
細胞膜依存的な膜タンパク質の構造・機能の保存
結合ターゲットの膜タンパク質を発現している細胞をリガンドサンプルとして使用するため、細胞膜に存在しているときの機能・構造状態の膜タンパク質との相互作用データを取得することができます。
SPRm 220 Seriesの特長
2種類の細胞の同時計測・解析
SPRm 220シリーズ専用の新しいセルチャンバーキット“two-well chamber sensor kit”は、2種類の細胞を同一ウェル内で完全にセパレートされた状態で培養し、センサーチップ面に固相化することができます。同一視野内で2種類の細胞を結合標的とする計測を同時に行うことができるようになったことで、コントロール細胞をはじめとする対照サンプルとの比較実験を高精度かつ高効率に実施することができます。
〔2種類の細胞の同時培養および相互作用解析の事例〕
細胞解析系(Ki, IC50, Functional Assay)と相関性の高い解析値(KD)の取得
SPRm 220 Seriesは、セルベースのin vitro計測系で細胞表面における膜タンパク質とアナライト分子の相互作用を計測するため、Ki, IC50, Functional Assayなどの細胞解析系と相関性が高いKD値を取得できることが確認されています。
分子間相互作用解析システムと明視野顕微鏡システムの融合
『2次元SPR計測』と『明視野顕微鏡』の2つの計測システムの融合により、細胞とアナライト分子との相互作用の分布を二次元マッピング画像として取得することができます。この計測技術により、同一視野内で細胞領域における相互作用シグナルと細胞外領域における非特異吸着シグナル(リファレンス)の同時取得、状態の良い細胞を計測対象とする最適な計測視野の設定が可能です。
SPRm 220 Seriesによる相互作用計測
計測のワークフロー
計測データ
SPRm 220は、細胞の明視野顕微鏡画像、SPRシグナルを二次元プロット表示したSPR計測画像の二種類の計測データを取得します。明視野計測画像は細胞の形態や密度などの培養状態の情報、SPR計測画像は細胞の接着状態やアナライト分子と膜タンパク質との結合反応の情報を取得し、これらの情報をもとに最適な計測視野の設定、相互作用シグナルの解析を行います。
カイネティクス解析(ka/kd)とアフィニティ解析(KD)
計測画面上に設定した解析領域(ROI)内のSPRシグナル強度の平均値を時系列にプロットしたセンサーグラムをもとに、相互作用解析(カイネティクス、アフィニティ)を実行します。リファレンスには、計測視野内の非細胞領域で検出されたシグナルを使用します。
グリッド解析
計測画面上に格子状のROIを設定し、各ROIから取得したKD値のヒストグラム解析(ガウス分布)により、計測視野全体としてのKD値、結合様式のヘテロジェネイティの有無(➤ 詳細はこちら)、計測データのクオリティ(主にSN比)の情報を取得します。
SPR顕微鏡のアプリケーション例
1. 受容体を標的とする抗体の結合解析
免疫チェックポイントを治療標的とする抗体医薬の機能評価モデル
リガンド:CD20
アナライト:リツキシマブ
細胞:Ramos cell (B細胞、ライブセル)
関連ワード:がん免疫、抗体医薬、結合のヘテロジェネイティ
2. 分泌タンパク質を標的とする低分子化合物の結合解析
免疫逃避機構の阻害による新規治療技術の開発
リガンド:galectin-1(細胞表面に結合することで立体構造が安定化)
アナライト:ミノサイクリン
細胞:U251野生型(神経膠腫細胞株) / positive
U251変異型(galectine-1ノックアウト) / negative
関連分野:がん免疫、免疫逃避、新規治療標的
3. 受容体を標的とする低分子化合物の結合解析
アドレナリン受容体の拮抗阻害薬の開発
リガンド:ADRA2A
アナライト:Compound 4n(ADRA2Aに対する結合選択性)
Yohimbine(様々なADRA受容体に非選択的に結合)
細胞:Chem-1(ADRA2A過剰発現) / positive
Chem-1(parental) / negative
関連分野:敗血症、抗炎症、誘導体、結合選択性
4. トランスポーターを標的とする低分子化合物の結合解析
医薬開発品の機能性評価
リガンド:トランスポーター
アナライト:低分子化合物
細胞:HEK293(標的トランスポーター過剰発現) / positive
HEK293(parental) / negative
5. 周囲環境により変動する受容体とアナライトとの結合特性の解析
炎症環境下のGPR4に適合したアンタゴニストの検討
リガンド:GPR4
アナライト:Compound 13
細胞:Hela(GPR4過剰発現, pH7.9で培養) / high affinity binding
Hela(GPR4過剰発現, pH6.8で培養)
Hela(GPR4過剰発現, pH6.4で培養) / low binding event
関連ワード:酸性化、pH感受性GPCR、プロトン化、結合特性の変化、IC50











